比べてみると一目瞭然。補綴臨床の醍醐味、総義歯人工歯の排列と試適 第3回補綴アドバンスコース〜ブログ 米国補綴専門医が教える、一般歯科医の知らない世界Vol.5〜
第3回補綴アドバンスコース。人工歯の排列と試適。スタートアップコースや座学で十分に総義歯の審美歯科に習熟し、実習スタート。

以前、総義歯を作成した患者さんにご協力いただき、各自で排列してきたものをセットし、調整点を分析していきます。見本と比べながら、他の受講生の排列模型と比較しながら、理想的な人工歯の位置を模索していきます(写真の写りはご容赦ください。その場で携帯で記録しています)。



どの排列模型のどこがおかしいのか、見分けがつきますか?パッと見ただけでは気付きにくいかもしれませんが、頭の中に基準の歯列形態があれば、どこを修正すれば良いのか、すぐに分かります。
人工歯の排列位置にもベストポジションが必ずあり、そこに歯が並ぶと、まるで天然歯のようにぴったりと顔や口唇と調和します。
受講生の皆さん、最初は四苦八苦していますが、ポイントを共有しながら、修正を繰り返していくと勘所が掴めるようになってきました。

ただし、一回二回やったくらいでは、体得は出来ません。最低5ケース、やってみて、修正を繰り返すと少しずつ掴めてくるでしょう。

アメリカの補綴専門医過程のレジデントが行うフルマウスの人工歯排列の技工は、総義歯、部分入れ歯、インプラントのフルマウスのケースなど全て合わせて50ケースほど。
もちろん、ファカルティからOKが貰えるまでは先に進めませんので、皆土日返上で3年間、技工作業に取り組みます。
そうは言っても私自身、歯学部生の時はまさか自分で人工歯を排列し、技工作業をするようになるとは夢にも思いませんでした。
不思議なもので、補綴、咬合がわかると、歯科の臨床が本当に楽しくなります。インプラントも入れ歯もセラミックも自由自在に扱えるようになるからです。
日本の国民皆保険制度の負の側面という気がして残念でなりませんが、こうした手作りの、本当に質のいい被せ物や入れ歯を作成することは、保険診療での対応は難しいと言わざるを得ません。
自由診療の治療費とは、いいものを作る時間、材料、機材など設備はもちろんそうですが、、何よりも、それらを使いこなす専門医の知識や技術、経験に対する、つまり専門医資格取得に費やした期間、その投資に対する対価と、私は考えています。
自由診療の歯科医療が素晴らしく、保険制度がダメだと言うのではありません。
美味しいお肉が食べたい方は、神戸牛の専門店に行くし、安く早く済ませたい方はチェーン店の牛丼ですよね。それと一緒で、自分のライフスタイルや歯や健康に対する意識に応じて、選べばいいのではないでしょうか?治療内容によっても選べますし。歯科治療、特に補綴、被せ物やインプラント、入れ歯は、もっと患者さんが選べるオプションがあっていい。
ただし、やっかいなのは治療費に見合う治療が受けられるかどうか、患者さんからは見分けがつかないこと。歯科医師側と患者さんサイドで情報量、知識量が違い過ぎて、患者さんは一体何が正しいのか分からない、それにつきます。
その専門性の高さ故に生じる情報量の不均衡を、このブログを通じて少しでも解消していきたいと思います。