保険診療と自費診療、「理想的」な歯科治療とは〜自由診療を受ける前に知っておきたいこと〜
ここで、タイトルにあえて「理想的」としたのには、理由があります。
例えば保険の材料で総義歯を作ったとしても、それが「理想的」なステップを重ねて作成されたものであれば、トラブルはそれほどなく、ある程度使えるようにはなります。逆に自費でも、理想的な「あるべき」ステップを踏まずに作ると、何かトラブルが起きる、きちんと咬めない場合があります。

(写真は、全顎的なインプラント治療を行ったケース)
当然治療費に応じて、使用できる材料は異なります。自由診療なら、当然時間も多くかけられるはず。 しかし、なぜこうした問題が生じるのか。
それは、原因推測の掘り下げが足りないこと。つまり、現在の状況がどうなっているのか。過去の既往歴と何故そうそうなったのかその考察が足りないから。
診査診断の重要性に、保険診療も自費診療も関係ありません。あるべき治療をするためには、まずはあるべき診査を行わなければならないのです。
日本では、保険診療が主流なため、保険点数がつかない診査は軽視されてしまう傾向があります。
そしてもう一つ、構造的な根本的な問題として考えられるのは、日本にはより高度な職業訓練を受けられる受け皿がないこと。
この国では、専門性の高い知と技の伝承がスムーズにいきません。なぜなら、アメリカのように選抜された歯科医が、適切な臨床トレーニングを指導医のもと受け、効率的に学べる機会がないからです。
保険診療でも、真摯に臨床に取り組んでいる歯科医はたくさんいます。
ただし日本では、医療の質の向上は属人的な努力に依存するところが大きいのが実情です。
こうした状況からはたまたま突出した個は稀に現れますが、ある一定レベル以上の臨床家を大量に生みだすることはできません。
深く考えて実践する環境の未整備。じっくりと思考を熟成し、技の精度を追求する、そうした場が日本には極端に少ない。「理想的」な学びの場がない環境で、どうして「理想的」な歯科治療が実現できるでしょうか。
アメリカの補綴専門医は三年間かけて、インプラント、審美歯科、入れ歯などすべて満遍なく学びます。
ある一定のレベルに達したと認められないと卒業出来ません。学ぶ量と質が全然違うのです。
今後、一つの問題提議として、このブログで、総義歯に限らずアメリカの専門医養成課程での学びを、一つずつ紹介していきたいと思います。
アメリカの歯科臨床の全てが優れていると言うつもりはありません。ただしかなり「理想」に近い臨床教育プログラムが存在し、機能していることは間違いありません。